どんつきを右に曲がって左のかどっこ

天使のウインク・4

さて、 この 続き。


胸痛発作が治まり、かつ、自食できているということから、まずは点滴を外してもらい、
続いて、血中酸素量も順調に90%を推移しており、もうほぼ心配ないということから、
日中は酸素チューブと血中酸素量を測る指のクリップも外してもらい、と、かなり身軽になった私だが
依然、左胸の24時間監視型心電図モニターの機械は取ってもらえず付きっぱだったので
絶対安静は一応解けたものの、循環器病棟のフロアーから出ることはまだ許されなかった。
何故なら監査室であるナースステーションから遠ざかると心電図の電波が届かなくなるとかで。

だが、その時の私には、
「この真下にある一階の売店で立ち読みすることすら、まだできないのか…」
というような類の悲壮感は全くなかった。
何故なら、そんなことよりも今私に与えられている使命を私はもう見つけてしまったからだ。


オカマのヤマナカさんについての観察。


ヤマナカさんが、いわゆる「おねえマン」な人であるのはもう判ったが
彼女の中にある男と女のパーセンテージは果たしてどれぐらいなのかがわからない。
もっと言えば、「ヤマナカさんの性自認はどっちなのか?」ということだ。
産まれもった性を越えようとする人と付き合うにおいてそこを間違うともう致命的であると私は考える。
そこをうっかり間違ってしまうと、彼ら彼女らはまさに計り知れないほど傷ついてしまうだろう。
だが、彼ら彼女らは例えそれを傷つけられたとしても、その傷つきについての主張をあえてしない。
何故なら、「むしろ自分のほうがおかしいんだ…」という思いがきっと常にあるんだろうと私は考える。

ですから例えば今回のヤマナカさんの場合でいうと
ヤマナカさんが「私は身も心も女性なのよ。なんてったって、私はナースだし♪」と思っているなら
それは完全に女性として接しなくてはいけないし、ではなくて
ヤマナカさんが「私は心は女性なの。だから私ってば、なんちゃってナースなのw」と思っているなら
概ね女性、ネタ的に男性ぐらいで接して、なんか多分オッケーなんですよ。


そうして私がヤマナカさんを観察し、また細心の注意を払いながら彼女に接しているのも関わらず
同室のお姉様方は、オカマ言葉満開で女形のような一挙手一投足をしているヤマナカさんに対して

「あんたは100%男」

的な発言と接し方を平気でしていたので、逆にそれを見聞きする私のほうがなんもうハラハラした。


例えば、藤田さん(仮名)の清拭の時。

藤田さん「男の人に体拭いてもらうとか悪いなあ〜」
ヤマナカさん「いいのよ〜」
藤「でもほんまはいややろ?男が女の体拭くなんて情けないやろ?」
ヤ「……藤田さんはいや?」
藤「私はいややないよ。でもあんたがいやなんちゃうかと思ってなー。男が女の体拭くなんてなあ」
ヤ「だってお仕事だもの〜」
藤「なんぼお仕事でも男が女の世話するとかいややろ」
ヤ「ぜーんぜんいやじゃないわよ〜」
藤「そんなん男がする仕事と違うやろ?女の体拭くとかほんまはいややろ?男が女の世話するなんか情けない事やで。男が女の世話するとかな…………」


っていうか藤田の姐さんしつこい!ハウス!!!


例えば、中川さん(仮名)の検温・血圧測定の時。

ヤマナカさん「血圧、すごくいい感じよ〜」
中川さん「そうですか〜そらおおきに」
ヤ「先生もきっと喜んでくれはるわ〜。中川さん、お薬もちゃんと飲んでくれてご飯も残さんと食べてくれて、本当に頑張ってくれてはるものね」
中「先生、喜んでくれはるかー。それは嬉しいわ。そやけど、先生も大変やけど、あんたら看護婦さんも大変やなあ。朝来たり(出勤のこと)夕方来たり、夜中に来たりしてなあ…」
ヤマナカさん「そうね〜。実は大変なお仕事なんですよ〜w」
中「あんたも体壊さんようにせんとあかんよ」
ヤ「いや〜ん、ありがとうね〜。中川さん今日は優しいのね?お熱があるんと違う?w」
中「男やからって、人よりきばったら(頑張ったら)あかんで」
ヤ「そうね〜。だけど女性の看護師さん達もみんな頑張ってるのよ〜。さあ、中川さん、お熱計ってね」
中「女の看護婦は冷たいしキツい。私はずっとあんたに居てほしいわ」
ヤ「あらあらw…さ、中川さん、そろそろお熱計ろうか〜」
中「女の看護婦はあかんわ。キツい。男の人のほうがかえって優しいわ。女はいらんわ、女はいらんで。女はキツいからな、女は…………」


っていうか中川の姐さん早く熱を計れ!
この空気を読め感じろそしておまえもハウス!!!



神様からの出題に挑み中の私は一人黙々とその答えを見つけるべく悟りを開こうとしていたので
概ねベッド周りのカーテンを閉め切って下界を一切遮断し、いわば「スーニャ」の世界にいたので
そんな時折々のヤマナカさんの表情を全てタイムリーにうかがうことは出来なかったが、
そのようにさらりと「男」認定される時、ヤマナカさんの声のトーンが若干下がるのを聞き逃さなかった。
でもやはりこう、なんかイマイチ決定打に欠けるというか…
例えばお茶やお花や踊りの名家なんかで女性に囲まれて育った男性などは
物腰も柔らかく穏やかでちょっと中性的なところもあるので、そっち系かなとも思ったが
だがそれにしても、「逆に私がこれを学んで今後、店で爺婆おばはん相手の話術に生かしたい」と思うほど
お姉様方を巧みにあしらう、このヤマナカさんの「オバハントーク」はなんか完璧であり、
これは「普通の」…というと御幣があるが、「概ねが男性」の人にはなかなか出来るものではないのだ。
何故なら、これは確かに私が若かりし頃におかまバーで見た「それ」そのものなのだから。



そうしてヤマナカさんに釘付けになっている私の元に、いちごとももを丸投げされている最中の彼氏さんが
「誰もが実質守っていない面会時間」をアホみたいにちゃんと守って、午後2時以降に面会に来た。
彼は、私が一番心配しているいちごとももの様子をまず一番に伝えてくれた。
「…そんな感じで二人とも元気にやってるし、俺が仕事で無理な時は、ももの保育園の送り迎えのことも含めて、ミニャさん・とみぃさんに協力してもらえるよう頼んであるし、今月一杯は子どもたちのことについての段取りがついてるから。だからりちは何も心配しないで、とにかく今は自分の体のことだけを考えてゆっくりしてなよ」
と言った後、「で、りちのほうはどう?」と聞かれたので、私は
「うん。あのね、かっちゃん(彼氏さん)ちょっとこっちに来てくれる?」と言って病室を離れ、
心電図モニターがギリで働く、病棟の廊下の一番隅の隅っこのベンチに彼を誘導して、言った。


「あのね、うちの病室の担当の看護師さんがね、コレ(右手を揃えて左の頬に当てる。古より伝わるその典型的表現法を再現)なんですよ」



彼氏さんは
「おまえはこの期に及んでまたそれかwそんなんかwwwどうしてそういつもおもしろおかしいほうに話を持っていこうとするんだよアンタはwww」
みたいな目で私を見つつ、「いや、でもほら看護師って女社会だからさ〜」と言った。

私「あ、なんか、女社会だから少しぐらい女化もするやも…とかいう話やと考えてる?」
彼「違うの?w」
私「全くもって違いますね。そういうレベルの話とは違うレベルの話なんです、ヤマナカさんのことは」
彼「そうなんだ?w」
私「そうよね〜、あるわよね〜(声真似)とか言うて、しかも歩き方はマリリン・モンローよりもむしろモンローなほどのモンローウォークなんやで?歩く時の両手の位置はペンギンみたいにこう、腰の横に据えてな、指先を上に向けてぴょんと上げてはるねん」
彼「んなやついないってww」
私「だってほんまやもん!!!」
彼「てかあんた入院してるんだからちゃんと大人しく休んでなさいwww」


「あんまり病室を離れるのもあれだから」、と彼氏さんに促されて病室に戻る途中も、
私の陳情はずっと続いていた。

私「なー、かっちゃんってば!ちゃんと聞いてよ!!!」
彼「うんうんw」
私「ほんまにほんまやねんってば!オカマの看護師がこの病棟にいるんですよ」
彼「ないないw」
私「チッ(←舌打ち)あんたもヤマナカさんに会うたらわかるわ!」
彼「はいはいw」


まるでそれは

「おかあさーん!あそこの戸のとこにオバケがいるよお〜」
「何を言ってるの。オバケなんて本当はいないのよ」
「いるもん!ほんとにいるんやもん!!だって見たもん!!!」

みたいな親子の会話さながらだった。くっそー。


ひとつだけ言いたいことは


自分が信頼しており、かつ、自分の大好きな人が
自分の気持ちをまるでわかってくれようともしないという悔しさは
子どもでも大人でも、それは同じことだ。





話戻って。



そうして病室についてベッドに並んで座り、またしばらく近況報告の雑談などをしていたら
なんとタイミングのいいことに

「○○さ〜ん、昼食後のお薬はちゃんと飲めたかしら〜?」

というヤマナカさんのその声がフレームイン(入室)してきたので、私は

「ヤマナカさん来た!彼女が(オカマの)ヤマナカさんだよ!!!」

と彼氏さんに目で訴えたら、彼氏さんはなんか横で固まってしまっていた。





ほら見ろ!!!だから言うたやろが!!!




ヤマナカさんが病室の患者の一人ひとりになんか話しかけているのを私たちは声を殺して聞いていて
そしたら、「りちさ〜ん、おかげんいかが〜?カーテン開けますよ〜」と言って、
ヤマナカさんが私のベッドのカーテンをそっと開けた。

念のため言っておくが、別になんかこう「いちゃついて」いたわけでもないのに
ただベッドに並んで座っている「だけ」の私と彼氏さんを見てヤマナカさんは
「あらっ、まずいとこ見ちゃったかもw」みたいな「思わず」といった感じで手を口元に当てて息を飲んだ。

つーかそれ、昭和の少女マンガにしか出てこないだろ、なにそのそのリアクションwww
というそんな動きを魅せた、乙女よりもうなんかだいぶ乙女なヤマナカさんは、
気を取り直して彼氏さんに一礼してから、私の今の体調や痛みの具合などを聞き、
明日の朝にまた心電図の検査と、今日の夕方にまた採血があるという情報を教えてくれて、
去り際に妖しい流し目で彼氏さんのことをもう一回見て、そっとカーテンを閉めて去った。


彼氏さんは半笑いと苦笑いが混じったような複雑な顔で、さらにますます固まっていた。


その彼氏さんの反応から、それがある意味私の中での「ヤマナカさんの決定打」になった。
神様からの出題を解くにおいて、彼氏さんは本当にいい仕事をしてくれたと彼に感謝しています。

てか、私の入院が長引くと、
私の状況を聞くべくナースステーションに足しげく通うであろう彼氏さんが
そのうち「犯られる」かもしれないなwwwと、ちょっとそう思った。


次回、ようやく完結編に続く




  1. 2009/11/07(土) 00:15:26|
  2. 闘病?ネタ

天使のウインク・3

さて、 この 続きです。

私が入院することになった循環器病棟の看護師はどうやら三交代制で勤務しているようで
早朝から夕方までと、昼すぎから深夜までと、夜から翌朝まで、という具合にオーバーラップしながら
ひとつの病室につき三人の看護師が入れ替わり立ち代わり、入院患者の看護を担当していた。

私が、うちの病室担当の看護師の一人である彼女に最初に出会ったのは、
二日目の早朝、起床時の検温及び血圧測定の時だった。

深夜未明に突如として「考え」を始めた私はいつのまにか寝てしまっていたようで
まだ夜明け前の薄暗い中、恐らく6時前頃に、
廊下と病室の照明を点けながら、「おはよう、○○さん。検温の時間ですよ〜」と、
一人ひとりのベッドを訪れては小声をかけていく、彼女のその気配で目が覚めた。

六人部屋のこのベッドの並びの順番的に次は私だな、と思って寝ながら待ち構えていると
私のベッド廻りのカーテンが、様子を伺うように遠慮がちに静かにそっと開き、
背が高くて肩幅が広い、でっかい女…もとい、健康的に体格のいい看護師さんが現れた。
その落ち着いた雰囲気から、歳の項なら私と同世代か二つ三つ上かな?と思った。

「りちさんおはようございま〜す。今日この病室を担当させていただきます、ヤマナカ(仮名)です〜。昨日の夜中に入院してきたのよね?苦しかったよね〜?今、胸の痛みはどう?大丈夫?」
とか言いながら、彼女は私の腕を取って血圧を計った後、体温計を手渡して
「お熱は自分で計ってね。あとで体温計を回収しに来ますのでw」
とか言って、またカーテンを閉めて去って行った。


寝起きの私は当然コンタクトをしてなかったので、ヤマナカさんの顔がよく見えなかったが
彼女が優しい笑顔でほほ笑んでいることだけはなんとなくわかったので
私にとってヤマナカさんの第一印象は好印象で、なんかいい看護師さんだと思った。


ただ、ヤマナカさんが私にかけてくれたその声が
欧陽菲菲、或いは小比類巻かほるバリのハスキーヴォイスだったので、
寝起きで半分ボケていながらも、常に「笑い」を忘れない私は、

「ゲイバーかw」 と、心の中でそう一応ツッコんだ。



ヤマナカさんは本当に心根の優しい看護師さんでね。
「平均年齢推定80才」の同じ病室の入院患者(お姉様方)が、

薬ストライキを起こして「心臓の薬も血圧の薬も絶対飲まない」とゴネても
「嫁が何時に面会に来るのか聞いてくれ」と、仕事中の息子の嫁の携帯に一時間毎に電話を要求しても
「お父さん(旦那)に着替えを持ってきてと頼んだら、わからんから娘に言えと断られた」と嘆いても
「さらには娘に、お父さんが自分の身の回りのことが出来ないのはお母さんが甘やかしたせいや。そのことで私が迷惑していると責められる」と愚痴っても
病院食は味がないから美味しくない、どこその店のお漬物が食べたいとワガママを言っても
「手が痛い足が痛い腰が痛い頭が痛い…痛いって言うか私は頭が悪くなってる、もう私はボケた」とか、
そんな「かまってほしい病」を発症しても

そうしてお姉様方が朝から昼までのたかが数時間の中で、次から次へとあらゆる「個性」を魅せても、
ヤマナカさんは絶対に嫌な顔をしなかった。

「そうよね〜」 とそれを否定しないであげたり
「あるわよね〜」 とそれに同調もしてあげたり
「いいのよ〜」 とそれを許してもあげたり
「それはダメ。○○さんは病気を治すために入院してるんだからね」 と、時には折檻もしながら
自分より倍以上も年上であろうそのお姉様方に、まるでそれは「聖母」のように接していた。


「天使」っているんだな…と思いました。


ヤマナカさんは確実に「ナイチンゲール」の産まれ代わりだと思った。

私なら正直そんなことに毎分毎時間毎日毎日付き合っていられないですよ。
「子どもならともかく、あんた私の何倍生きてるねんな?ええかげんにせえよ」
とか、多分思ってしまうだろうし、


「ほなもう薬飲まんとけ。それでええんやろ?」


とか、究極のことを言ってしまう自信がある。
でも、そこで諦めない辞めないヤマナカさんってもうどんだけ「白衣の天使」なのかと。



私はまた「考え」を始めた。


確かに、確かにオカマみたいな「ダミ声」やけど、この人は本物の天使だ。
この「ダミ声」に関して言えば、例えばそれは…そうやな…。


「若い頃に水商売をしていて、酒で喉をやられた」とか?


いや、むしろそれなら納得のいく説明がつきますよ。
何故なら、水商売の女の人はわりかし情に厚く、弱ってる人に優しいところがあるので
昔は水商売をしていたヤマナカさんがフィールドを変えて今看護師をしているとしても
それはあながち全くありえない話ではないじゃないですか。

過去は今に繋がっていて、今は未来に繋がっていく。
昨日が今日に続き、今日がまた明日に続いていくのだが、
その未来の全貌なんてものは、今はまだ見えないものなのだ。

水商売をやっていたヤマナカさん(←もはや断定)は、その頃は
自分が後にまさか看護師になるなんて知り得もしなかったかもしれないし
よくわからない持病がありつつ、さらに聞いたこともない病気を疑われて拘束されている私も
明日あさってでは無理でも例えば十年二十年後には
今は全く見えない未来をまた生きているのかもしれない。


よって、この今回の試練で神様が私に投げかけた問いの答えは


「焦るな」


かな? と、思った。





だが。


昼一の検温及び血圧測定の時、ヤマナカさんがぶらさげている名札を間近で見て


「山中太郎(仮名)」 


という、そのもう明らかに男性の名前を確認した時、考えの全てが逆に白紙に戻った。



神様はものすごい難題を私に突きつけてきたぞ、と。




私はそういった「性の形」についてはわりと許容範囲が広いほうなんですね。
私がいわゆる「オカマさん」の世界観に出会ったのは、ハタチの頃でして、
祇園の「カルシウムハウス」というゲイバーにちょいちょい遊びに行っていたんですよ。
その中で、女の私よりも女以上の気遣いも出来る「彼女ら」に感銘を受けましたし
無駄毛処理の箇所ごとに四本のカミソリを使い分けているという「彼女ら」の努力に脱帽しましたし、
なおかつ彼女らは「男に不快感を与えない、押したり引いたりの笑い」も完璧に出来るので
変な話、今付き合ってる彼氏がこんな「オカマさん」にハマったら、
私はもう勝ち目がないかもしれないとすら思うぐらいの驚異の存在でした。

余談ですが、当時まだ全然売れてない駆け出しの頃のはるな愛ちゃんがその店にいまして、

「お化け屋敷へようこそ〜〜〜」

みたいな、残念ながら化け物が拭いきれないお姉(お兄)様方の中で、
はるな愛ちゃんは「逆に浮く」ぐらいにもうダントツで可愛かったですし、普通に「女の子」でした。
ショーの中で意地の悪い客に「おまえ○高(男子校)の大西やろ!w」とか
そんな汚い野次を飛ばされては悲しそうな微妙な表情もしていましたけど
彼女が今や「俺の本名は大西ケンジや!www」ってそれをネタにも出来るようになったのが、
なんか良かったな、って思います。



話戻って。


そんなわけで「オカマ」にはある意味寛容な私ですが、
「白衣の天使の看護師」 いや 「看護婦さん」 が実は男でした、ってなったら、
それは思考がちょっと停止しました。


オカマの看護婦とか、実際に?……実際に!!!


男の看護師さんも病棟には少しはいましたけど、
この聖母ヤマナカさん(白衣の天使)が「男」って知ったら、逆に誰でも「話」は白紙に戻るやろ?


っていうか、普通、女性の入院患者の病室担当に「男」の看護師は付かないので…。


ヤマナカさん、あなたは一体何者なんだぜ?



続く


  1. 2009/11/04(水) 23:40:08|
  2. 闘病?ネタ

天使のウインク・2

さて、 この 続き。


そうこうしているうちに私は、なんか点滴で輸液を入れないといけない状態になったようで。

酸素不足だか血圧高いせいか知らないが、
「今めっちゃ細くなってしまっている」という私のその危うい状態の血管に
なんとかして点滴の針を刺し入れるべくして、
その研修医っぽい先生と新人らしき若い看護師さんが私の左腕を拘束したのだが、
針で突いたらやっぱり血管が破れてかなりの内出血をするという大ハプニング、
即ち「点滴失敗」に三回も見舞われ
もう感覚のないはずの左腕に、逆に、「痛み」の感覚が戻ってきた。

血と輸液が漏れて青く腫れ上がるその箇所、箇所の止血処置をしながら、先生がくじけはじめた。

先生「無理かもしれないです…(針が)どうしても入らない…」
看護師「でもこのままカテーテルになるかもしれないのでラインを確保しておいてもらわないと…」
先生「そうですよね…。肘の部分ならなんとか捕れるかもしれませんが…」
看護師「仕方ないです、お願いします!」
先生「すみません…。じゃあ肘でいきます」

なんのことかと言うと、要は肘の辺りにはわりと太い血管(静脈)が通っているらしいんです。
だから、採血の検査とか大概、肘の辺りから採るじゃないですか、採りやすいから。
ただ、ずっと付けっぱなしの点滴の針を肘のその辺りに刺すっていうのは
正直ちょっと色々と迷惑な話らしいのだ。
何故なら、肘の辺りはどうしても「ちょっとでも動くと曲がる」ので、針が当たって患者も痛いし
そうしてつい患者が腕を曲げてしまうたびに点滴の機械がエラーを起こしてしまい、
朝昼晩夜中とかに看護師さんがそのエラーを修正しに走らなければならないので
「仕事を増やしてしまってごめんなさいね」という、恐らくそんな話なんだと思うが、
そんなことよりカテーテル(血管から管入れて心臓まで届かせる手術)になるかもしれないっておい!!!


私はただでさえ、
拍手をしたぐらいで手の平の血管が切れて内出血するぐらい血管が脆く破れやすいのだが
そうしていわば「正真正銘、思い切り」血管を破られた箇所がもうめっさ痛かったので
あの時はさすがに先生にちょっとだけキレそうになったが、私はそれでも我慢した。
どのみちもう左上半身全部が尋常じゃなく痛いのだから、
今さら左腕の血管が三箇所破れたぐらい逆に言うたらもう一緒のことやとか思って我慢した。


ってか、循環器のエキスパート先生はいつになったら来るねん!?


っていうか、逆に「下がれボケ!!!」はその研修医らしき先生にではなく、むしろ
脇に待機して色々していたベテランのおばちゃん看護師にこそ言いたかった場面もあった。
頑張る私が発作の痛みに苦しむたび、そのおばちゃん看護師が
「いつから痛かったか」を、もう何回も何回もしつこくしつこく聞いてくるんですよ。


私「ハッハッハッ(←浅い呼吸)うあああああぎゃあああ〜〜〜!!!(←発作)」
おばちゃん看護師「りちさーん!その痛みはいつから?」
私「あああああ〜〜〜〜!!!!…じゅ、じゅう、…いち、じっ!ご、ろ…!ぎゃああああああああ!!!」
おばちゃん看護師「11時頃から痛かったのね?」
私「は、はいっ…ううっ…う、うあああああっ死ぬ、いたい〜〜〜!!!」
おばちゃん看護師「それはいつから痛かったの?」
私「ハッハッ……。じゅ、じゅう……あああああああっ!!!」
おばちゃん看護師「うん???10時かな?」
私「ち、ちが……違うっ!!!ハッハッ…じゅ、じゅう…いちじ…」
おばちゃん看護師「11時から痛かったの?」
私「は、はい……!ううっ…。ハアハア…。11時、頃からです…」
おばちゃん看護師「そうかー。11時から痛かったのかー」
私「ハア、ハア……(←ひと段落)はい……」


このクソババア!
おまえ絶対わざとやってるやろ!
一回聞いたら覚えろボケ!!!



多分あれは私の意識と気力を落とさないようにする作戦だったんだろうと、
今となってはそう思うし、彼女に感謝をもしているのだが、
痛くてしんどいその時は、もうそれがムカついてムカついてしょうがなかった。
看護師って絶対ドSやと思った。



だいぶしばらくして、術衣のままのエキスパート先生とやらが到着した時、
私は、そんなこんなでもう色んな意味でボロボロになっていた。


エキスパート先生は処置室になんかいっぱい機械を搬入してきて、
心臓エコーやら胸部レントゲンやら何やら色々と検査をした。
体重がかかるだけでも痛い左胸に、心臓エコーの機械をぐいぐいと押し付けられた時は、
もう本気で「このエキスパート先生に殺される!」と思うぐらいおっそろしく痛かったので、
私は逃げようとして暴れてのたうちまわり、おばちゃん看護師に全力で押さえつけられた。

そうしてなんやかんや検査をした、後に私の主治医となるそのエキスパート先生は
「心外膜炎の疑い」という病名を「現時点で一応の確定」としながらも、

「こんなふうに肩や腕やわき腹に至るまでのケースの発作を診るのは僕も初めてなので、今はなんとも言えない。熱もかなり高いし、血液から強い炎症反応が出ているので、今日はこのままこの救急病棟に入院してもらいます。回復次第で、いずれは循環器病棟に移ることになると思います」と言い、

私は、処置室の簡易ベッドから、救急病棟の看護師さんらが迎えに来たベッドに移されて、
時折また発作と呼吸困難を起こしながら、救急病棟に入院することになってしまった。


普段なら、

「はあ?このまま入院?冗談じゃない!100%無理です!子どもらだけ置いて入院なんかできるわけがないじゃないですか!朝になってあいつらが起きるまでに私は家に帰らんとあかんのです。だから私は帰る。とにかくこの痛みを抑える薬だけ出してくれ!」

と、このまま入院することに対して抵抗・拒絶していたと思うが、
その日は彼氏さんがいてくれたので、子どもらのことはもう彼氏さんにお願いしようと思った。
いつもいつも子どもらのことを本当に大切にしてくれているこの人になら、
私がいない間、いちごともものことを全面的に任せられると、ある意味開き直ってそう思った。


救急救命病棟に移ってからも発作はまだ続いていました。
そして私は、とうとう寝ることも座ることも出来なくなっていて、
リクライニングベッドの上で体に色んな管や機械をつけられて身動きが取れなくなっていた。

入院手続きをしてくれた彼氏さんが私の病室に来た時、私は息も耐え耐えに彼に全てを託した。

私「かっちゃん(彼氏さん)ごめん…。いちごの学校と、ももの保育園に電話して。私が入院したことを伝えて。…それと、店(職場)に電話して、私が入院したことを連絡して。今日休ませてくださいって言うてるって、店長に伝えて。…それと、うちのマンションの管理会社にも電話して。昨夜の事件は開錠だけで済みました、って。…それと、オトンにも、私が入院したことを報告しといて。入院するには、身内の保証人が要るらしいから…。あと、私が入院したことを、とにかく、ミニャ(私の親友)に伝えて。ミニャはほとんどの私のツレとも繋がってるし、かっちゃんがいちごとももを抱えてピンチになった時、きっとミニャが軸になってみんながかっちゃんを助けてくれると思うから、とにかくミニャにまず連絡して。…それから、それから…」

彼氏さん「わかった。もうわかったから。子どもたちのことは心配しなくていいから」


そうして私は緊急入院をすることになったのでした。


救急病棟の看護師さん「私も子どもがいるから、気持ちわかるわ」
私「(痛くて疲れて相づちが出来ない)」
救急病棟の看護師さん「りちさん…痛み止めの薬、飲んでみようか?」
私「ラクに、なりますか…?」
救急病棟の看護師さん「それはわかりません。でもあなたはよく頑張ってるから、少し寝たほうがいいわ」


そうして私は痛み止めの薬を、多分朝の5時過ぎぐらいに飲みました。

飲んでしばらくは何も変わらなかったが、だんだんわき腹の緊張がほぐれてきて
左肩が上がるようになり、リクライニングの背もたれにもたれられるようになり、
そこで記憶が落ちた。

次に目が覚めたのは、朝一の採血と血圧検温で起こされた時だった。
実際1時間も寝てないと思うが、なんかもう丸一日爆睡したぐらいの清々しさだった。

看護師さんが開けてくれたカーテンの向こうからこぼれる朝の光が眩しくも愛おしくて
「あ、もう少し寝る?カーテン閉めとく?」と逆に聞いてくれた看護師さんに
「いえ、むしろそのままで。全開で開けておいてください」と自分から言ったぐらいだった。

体を動かしたり咳き込んだりするとまだ胸や背中に響いて痛みがあるものの
全然横になれるし全然ずっと座ってられるし、車椅子にも自分で座れる。
さっきまでのあの痛み苦しみは一体何だったんだろうか?と逆に思うぐらいだった。
運ばれてきた朝ご飯も、デザートのキウイまで残さず全部食べた。

看護師さん「薬がよう効いたみたいやね。良かった。午後には循環器病棟に移れるかもしれんね」
私「退院はいつごろになるんでしょうか?」
看護師さん「またあとで先生の出さはった入院治療計画書を持ってくるけど、今日入ったばっかりやからね…。早くても1〜2週間はかかるって先生は診断してはるみたいよ」
私「そうですか…」


その日の私はもう眠くて眠くて、気付けばやたら寝落ちしていた。
多分、夜通し痛みに耐え続けたことで体力を消耗しまくったんだと思う。

朝、ミニャととみぃが来てくれた時もなんかボーっとしてて、
コンタクトつけてないから顔が全く見えないこともあったけど、それ以上にボーっとしてて
誰が来てくれたんか最初全然わかってへんかった。
心電図とエコーの検査中もずっと寝ていたし、採血の時も血抜かれながら寝ていた。
午後に救急病棟から循環器病棟に移される時も、その移動中ですらずっと寝ていたし
平均年齢推定80才の循環器病棟の同室のお姉様方とトークを交わすこともなく、
点滴とモニターと酸素チューブに繋がれていて動けないことを逆手に取って
私はずっとベッドに引きこもるような状態で、ずっとずっと寝ていた。

彼氏さんが入院に必要な持ち物を持ってきてくれた時も、
横浜の元旦那とあーちゃんが駆けつけて来てくれた時も、意識は半分以上寝ていて
あと、翌日の休みに会う予定をしていたツレと、
今日明日で仕事を頼まれていた仲間に入院したこと&謝罪をメールで伝えたのだが、
そいつらが血相変えて飛んできた時もしゃべってる途中でどうも私は寝てしまって、
目が覚めたら、そいつらはお茶とポカリと励ましの手紙を置いて帰っていた。


そうして入院当日は朝から晩まで寝ていて、
意識がはっきり戻ったのは入院二日目の深夜未明のことだった。

救急に運びこまれてきた時の採血で炎症反応が異常に出たので、
明けて、朝昼夜とその経過を見るために採血しまくられたんですよね。
だから腕の血管からはもう血を抜くとこがなくなってしまったようで
その深夜の採血で、足のスネに針刺して、そこから血を抜かれたんですよね。
足から採血されるのはそれが初めてではないが、あれ、もうめっちゃ痛いんですよ。

その、スネに針刺された痛み+昼間しっかり寝まくったもんやから、変に目が冴えてしまって
お姉様方のいびきと寝言と、時折放屁音が響くその暗闇の中、私は「考え」を始めた。
ただ、「自分が焦る方向の考え」は、この度、もう極力しないことにしたんです。
何故なら、それを考えて血圧が上がってしまったら、逆に退院が延びてしまうかもしれないので。

具体的に言うと、

「今子どもたちはどうしているだろう」と考えると、
切なくてブルーになるので、あえてそれはもう、極力考えないようにした。
あいつらはわりと逞しいし、支えてくれる大人もそばにいてくれてるし。
逆に、こんな色々なものに繋がれてなんもできない私がここでそれを考えても仕方ない。
元気になったらまた、美味しいご飯を作ってお返ししよう。

「店(職場)のみんなはどれほど迷惑してるだろう」と考えると、
申し訳なくてブルーになるので、あえてそれはもう、極力考えないようにした。
今日から特売チラシが入る期間に突入するので店はまた忙しいことになっていると思うが、
仕事のできる後輩や散々ピンチを乗り越えてこられた諸先輩方がきっとなんとかしてくれる。
逆に、こんな色々なものに繋がれてなんもできない私がここでそれを考えても仕方ない。
元気になったらまた、頑張って仕事してお返しをしよう。

「彼氏さん及び、チーム・かっちゃんに属するツレらがどれほど困惑してるだろう」と考えると、
自分が情けなくてブルーになるので、あえてそれはもう、極力考えないようにした。
だが、多分あいつらは私と違ってこんなことでパニくるほどヤワじゃないからきっとびくともしていない。
逆に、こんな色々なものに繋がれてなんもできない私がここでそれを考えても仕方ない。
元気になったらまた、「笑い」でお返しをしよう。


よって私は、それらを除く、「焦らない方向での建設的考え」を始めた。


神様は、なんでこのことを今、私にお与えになったのか。
このことにはなんかきっと、「理由」があるはずや。



よく言われる・聞くのは「人生に無駄なことなんかひとつもない」ということ。
それが本当だとすれば、今この出来事にも何かしらの理由があるはずや。
でなかったら、もう今生きていくだけで十分必死な私に対して、
わざわざまださらにこんな苦しみを、伊達や酔狂・遊び半分で神様がお与えになるはずがない。


絶対、なんかあるんや。


きっと絶対に、今ここに「何か」があるんや。




そうして神様からの出題を考えている中で、私はあるひとつの答えを見つけたんですよね。



結論から言うと、


私の病室担当の看護師が オカマ だったんですよ。


続く。

  1. 2009/11/02(月) 00:19:58|
  2. 闘病?ネタ

天使のウインク

さて。

この 続き? です。


そうして一件落着したかと思えたその10月20日火曜日の夜。
あれは確か23時頃だったと思いますが、
なんか背中の肩甲骨の辺りがもうめっちゃ痛くなってきたんですよね。
そしてそれに付随して、その肩甲骨の真裏である胸の辺りまで痛くなってきた。

私は貧乳のくせに肩こり持ちなんで、この症状はまた肩こりだと思った。
いつもそうなんですよね。肩こり首こりがMAXになると肩甲骨の辺りが痛くなる。

っていうか、独身の頃から通っていた整骨院の先生が言うには
私の肩こりはそもそもその肩甲骨の辺りのこりが発端らしいので、
肩を揉みほぐすというよりも、背中の肩甲骨辺りを揉みほぐさないと肩こりも治らないとかで。


てなわけで私は、その問題の肩甲骨の辺りに湿布を貼って、寝たんですよ。


ほんなら。


夜中に左の背中と左胸の痛みが苦しくなって、その苦痛で目が覚めた。
もう裏も表も骨や筋肉が全部固まったようになってしまって、息がまともにできない。


これは霊の仕業だ。


と、最初は普通にそう思いました。


私は、今は「その力」が耄碌してしまっていますが、
いわゆる「見える」人で、「乗られる」人だったんですよ。
16才ぐらいの頃から、見たり、聞いたりとか、金縛りに合うことも日常茶飯事やったし、
多分あれは幽体離脱?をして、自分が「乗られて」苦しんでる姿を見たこともある。
いちごを産んでからその力は何故か突然消えてしまったが(多分いちごが持って行ったと思う)
体が固まって息が出来ない=金縛り、って思って、私はそれを「解こう」と尽力しました。

でも、だめだった。

っていうか、体全体の自由(身動き)を奪われる「あれ」とは違い、
今なんか明らかに、左上半身だけが自由を奪われていて、
「あれ」の息苦しさとは比べものにならないぐらいに、息を吸うことが苦しい。
よって、これはいわゆる霊的なものの仕業ではない。

私はその時、布団で仰向けになって寝ていたのだが、
背中の左側に体重がかかることがもうめっさ痛いので、死にもの狂いで寝返りをした。
そうしてうつぶせの体勢になり、さらに膝を曲げて前屈姿勢になって少しはラクになったが、
だがしばらくすると今度は左胸に向けてのしかかる重みでまたもうめっさ痛く苦しくなり
起き上がって座ろうとしたら、左胸と背中が鉛のように重くてもはや体を起こすことも出来ず、
一度落ち着こうと思って深呼吸をしたら、心臓が破れそうなほどの超激痛が走った。


「あかん。なんかあかん、死ぬかも」



そう思って、隣で寝ている彼氏さんにこの「りっさん瀕死」を気付いてもらおうと、
熟睡中の彼氏さんの迷惑を省みず、まさに「自分必死」で、力の限り叩いた。



…。
……。
………。



気が付いたら、私は暗い夜道を走る車の中に居た。
「居た」って言うか、彼氏さんに寄りかかりながら、走る車の後部座席で「落ちていた」。
っていうか、いわばもう全身で彼氏さんに倒れこんでいるような形で、「私が、在った」。
運転席の横辺りに緑色に光る数字メーターが見えて「ああ、ここはタクシーの中なんだ」と判り、
自分は今多分病院に運ばれている途中なんだなと思い、痛みの中でまた意識が落ちた。


次に気が付いたら、私は固いベッドの上に寝かされていた。
左胸にはモニターが付けられ、指には血液中の酸素量を測るクリップが挟まれており、
多分私の心拍と比例する「ピッ、ピッ」という音が室内に鳴り響いていて、
さらに、頭上には手術の時に使うようなやたらでっかい照明があったので、
ここが「救急救命の処置室」であることが判った。

胸の痛みはさらにひどくなっていて、時折わしづかみにされるような発作が起き、
息を吸うたび激しく響くので、浅くちょっとずつしか呼吸が出来なかった。


私を診ている当直の先生はいかにも研修医っぽい若い女の先生で
その傍らに同じく新人っぽい若い看護師さん(半泣きだったことが印象的)と、
ベテランっぽいおばちゃん看護師さんがいて、その三人が私を囲むようにしてなんかしていた。

おばちゃん看護師「りちさーん!わかりますかーっ?病院ですよー!」 
私「うう…。は、は…い…。い、いっ、痛い…っ!」
先生「どこが痛いですかー!?」
私「左胸と、背中…が…。ハッハッ…(←浅い呼吸)息が苦しい…!」
おばちゃん看護師「その痛みはいつから?」
私「じゅ、じゅういちじ(23時)ぐらい……ぎゃああああああっっ〜〜〜(←発作発動)痛いーっ!!!」
先生「りちさんしっかりして!」
若い看護師「先生っ、血中酸素量が!」
先生「酸素チューブ入れてください!」
おばちゃん看護師「りちさーん。鼻にチューブ入れるよー?ちょっと気持ち悪いけど我慢してねー。鼻から酸素が出るから、鼻で大きく息を吸ってねー」


と、そこで私はまた意識が落ちた。


意識が落ちる寸前に、「救命病棟24時」のドラマでしか聞いたことがない、あの、
「何らかの問題が発生したことにより生命の存続が著しく危うい方向に向かっている警告音」を聞いた。
まさに七転八倒の痛みに犯されて、左胸と左の背中と精神が破壊されそうになりながらも、
「自分で自分の生命がだいぶやばい状態になってるのを音で聞くのは初めてやな…」と
どこか冷静に、かつ、ともすれば「オイシイ」とすら思いつつ、その警告音をキャッチしている私がいた。

廊下の待合で私のその「発狂」とその「やばい警告音」を夜通しずっと聞いていたという彼氏さんは
後日、「生きた心地がしなかった。本当に、本当に怖かった……」と、涙目で言っていた。
彼はあえて私にはその恐怖の理由を口に出しては言わなかったけど
「りちがこのまま死んでしまうんじゃないか?愛しいりちがもしも死んだら、俺はこの先どうしよう…」
とか多分思って、それが本当に本当に怖かったんだろうと思います。痛み入ります。


「っていうか、りっさん死ぬ気あらへんがな!www」



いや、あのね。

今となってはこうしてネタにしてますけど、ほんまにほんまにキツかったんですよ。
私の経験した痛みの頂上決戦はこれまで「陣痛」か、「S字結腸から先の尻カメラ」でしたけど、
今回のあの挑戦者はチャンピオンを脅かすほどのつわものでした。
何が辛いって、この痛み苦しみに「終わり」が全く見えないことが辛かった。
出産とか尻カメラ(ファイバー)とかは、いつか必ず終わりがくるじゃないですか。
でも、今回のあれについては、そんな心の拠り所がなかったですしね。
「私が生きてる限りこれが一生続くんちゃうか?」って思って、
こんなに苦しい思いをしながらも自分がまだ生きていることがもういやになった。


そうして私は何度も痛みの発作と呼吸困難で意識を落とし、地獄を這い回っていた。


気が付けば「採血の結果、尋常じゃない炎症反応が出ている」とか
また気が付けば「熱が39度まで上がった。血圧も依然高い」とか、
そんなあまり喜ばしくないニュースを薄い意識の中で色々と耳にした。
いつしか、背中〜胸から始まった痛みは左上半身全域に渡っていて
左肩がいよいよ上がらなくなり、左腕は棒のようにまるで感覚がなくなり、
わき腹は「下痢でお腹が痛い時に力入れて我慢してる時」のように緊張して固くなったままで、
もしかしたらこのまま左上半身付随になるんじゃないかなと、私は真剣にそう思った。


私の症状から疑われた病名は「心外膜炎」でした。


なので、心臓専門の循環器科の先生にバトンタッチすることになったのだが、
私を診てくれていた研修医らしき若い先生の話では、
私の少し前に運ばれてきた患者さんが心疾患の持病があってペースメーカーを装着している方で、
今日の当直の循環器科の先生が今その救命処置にあたっているので、
もう少ししたらきっとその心臓エキスパートの先生がこちらに来てくれるから、
そしたらもっと詳しいことがわかるから、お願いやからそれまで頑張って、と言われた。


ちょw何やねん、その不思議なお願いはw
逆に聞きたいのは、
今おまえは何しに救命救急の当直を請け負っているのだ?
君の勉強や経験のお手伝いをするために
患者は救急救命に運ばれてくるわけではないんですよ?



でも、ここでそんなふうにキレるのはあかんことやと思って、私は半分死にそうな笑顔で頷いた。
何故なら、痛みと呼吸困難に苦しむ私を逆になんともしてやれないことについて、
きっとこの若い研修医らしき先生も今、自分の力不足になんしか苦しんでいるはずなのだ。
そんな時に、ここで私が


「この役立たずが!下がれボケ!!」


とか、自分の痛み苦しみの感情にまかせてそんなんをダイレクトに言ってしまったら、
もしかしたらこの駆け出しの若い先生はなんかもうごっつ傷ついてしまって、
まだほとんど医者として何も始まってないのに、
志半ばにして、なんかもう医者という仕事をを辞めてしまうやもしれない、と思い、
私はまだ動くほうの右手を先生に差し出して、「先生…、先生、ここにいてください」と、言った。

そしたら、その若い先生は、私の右手をぎゅーっと握り返しながら、
「りちさん!先生はここにいるよ!りちさんお願い、頑張って!」と言った。


そこで私が、なんかそんな伏線があった中で
その研修医の先生に手を握られながら安らかな顔をして死んでしまったら、
それはなんかある意味とてもいいドラマになったんかもしれないが、
例えば私が連ドラの第二話ぐらいでポッと現れた患者で、先生の心の何かを動かして、
その役目が終わったらバチコーン死ぬ患者、的なバイプレイヤーだったなら
それはある意味いいドラマになったかもしれんが、


だが残念ながら、
無粋な私は逆にその空気を読まず、まだしつこく死ななかった。

よって、続く。


  1. 2009/10/31(土) 23:36:27|
  2. 闘病?ネタ

それは、「あき」まへん!

さて。

先日、私は ある記事 の中で、

(子どもは)常識を逸脱するようなことを平気でする。


と、書きました。

ただ、それに関してはいわゆる「幼少期の子ども」に重点を置いたつもりであり
今のうちの家庭で言うと、「ももレベルの話」で考える中でそう表現しました。

だが。


この度、我が家のしっかり者のチビっ子ママこと、いちご(10才)が、
まさか、まさかの、常識を逸脱する事件を起こしやがりました。
もうね、いちごに関しては完全に油断していましたから、開いた口が塞がりませんでした。
子育てって、もうなんてこう次から次へと問題が起こるものなのかと、改めて思いました。


正確に言うと、それは10月20日火曜日の夕方18時過ぎのこと。
その日、私はいつものように17時の終業時間まで精力的にがっつり働き、
仕事を終えた後、同僚と休憩室で軽いトークなどをして笑って家路に着き
家でタバコを一服してから、ダッシュでももの保育園のお迎えに走った。
その道中で、陸上の練習を終えて、友達らと下校するいちごと出会い、

いちご「ママー」
私「おう!おかえり。今からもものお迎え行くから」
いちご「うん」
私「宿題しときや」
いちご「わかってるよw」

という会話を交わした。
それは全然、もう全然いつも通りの日常だった。


「今日一日の報告」をかいつまんで、いや、むしろ、かいつまみすぎて
なんのこっちゃさっぱりわからん話を繰り広げるももをチャリの後ろに乗せて

(このまま買い物行ってもええんやけど、いちごが帰ってきてるから、一旦ももと、この保育園の持ち帰り荷物を家に置いてから、一人で出直すか…。てか、今カバンも財布も持ってないわ。家に置いてきてるわ。よし、やっぱ一旦家に帰ろう)

とか思って、その日はお迎え続きの買い物をしないで、まっすぐ家に帰った。


ほんなら。

とうに家に帰っているはずのいちごが、マンションの外廊下にいた。
いちごは外廊下の隅に置いているエアコンの室外機の上に宿題らしきプリントを広げて勉強をしていた。

私「???……あんた、こんなとこで何してんの?」
いちご「宿題してんの」
私「そら見たらわかるけど。てか家入れよwこんなとこにいたら寒いやろ」
いちご「今日な、学校に鍵持っていくの忘れてんー」
私「あ、そうなん?てか、ほなどうやって(エントランスのオートロック解除してここまで)入ったん?」
いちご「鍵忘れたって気付いて、下でママを待ってたら、隣のお兄さんがちょうど出かけはる時に会って、おかえりーって言うて中に入れてくれはったん」
私「そうかー。それはラッキーやったなw」

と言いつつ、私は自宅の鍵穴に自宅の鍵を差した。


だが、鍵が鍵穴に差さらない。


アハハ♪りっさんなんだか大失敗♪
彼氏さん家の合鍵と間違えて差しちゃったんだな♪(←もも風のん気ポジティブ)

と無理やり思って今差したその鍵を再度確認したらそれは寸分の狂いもなく「りっさん家の鍵」だった。


なんじゃこりゃー!? (←演技指導・松田優作氏)



これから。


いちごに、宿題しながらで悪いけどもものことをちょっと見ててなーママ買い物行ってくるわとお願いして、ももが持って帰ってきた保育園のお着替え類を洗濯機にかけてる間にパッと買い物に行って帰ってきてすぐさまご飯の用意をし、しながら、その最中にちょうど終わる洗濯物を干して、終わったら風呂掃除をして、ご飯の最後の仕上げをする。その頃にはいちごの宿題が終わるだろうから、出来たての温かいうちにいちごとももにご飯を食べさせて、食べたものを片付けてる間に風呂にお湯を張って、お湯が張れたら先にいちごをお風呂に入らせて、ももは私が入れて、上がったら髪を乾かして歯を磨かせて明日の用意をそれぞれさせて、「りち家子どもの基本就寝時刻」の21時までには寝かせる。それが出来ない場合でも、明日の子どもらの学校保育園での生活に支障がないように、遅くとも22時までには必ず子どもを寝かせる。

という一連の親の仕事が切羽詰って控えているのにも関わらず、鍵が何故か鍵穴に全く差さらない。

そのことについて、私自身の何か落ち度や鍵の変形等の問題はまるで見当たらないのに、
この鍵穴にこの世で唯一フィットするはずのこの鍵がなんかわからんけど今差さらないという、
自分の常識をもう遥かに逸脱するそのハプニングに見舞われた私は軽くパニックになった。
そんな軽くパニック中の私を、呆然かつ若干バツ悪そうに見ている背後のその視線に私は気付いた。

私「あんた。もしかして…なんか、した?」
いちご「今日、学校に鍵持って行くん忘れてん」
私「うん、それはさっきも聞きました。…で?」
いちご「で……。もしかしたら、頑張ったら開くかな?って思って…」
私「って思って、何を頑張った?」
いちご「そこにあったやつを小さく割って鍵を開けようとしたら、落ちて中に入ってしまった」

いちごの指差す廊下の手摺りの上には、
雨風で朽ちた手摺りの装飾のプラスチック片が散らばっていた。


私「こんなもんで開くわけがないやろ!」
いちご「もしかしたら開くかな?って思ったんやもん!」
私「それで開くなら鍵なんかいらんわ!!!」 


ブーたれるいちごに、
「なあ、さっきママがもものお迎えに行く途中で、いちごとすれ違ったやん?だからもうじきママが帰ってくるのは予想できたやろ?いつも通りのことやんか。なのになんでママが帰ってくるまで待たれへんかったんや?」
と聞くと、いちごは
「鍵を忘れたのは自分のミスやから、自分でなんとかして鍵を開けないといけないと思った」
と言った。

いちごは、わりと物事を物理的に考えるやつなんですよね。
よって、普段からいわゆる「無謀な挑戦」には手を出さないのだが、


どうやら私はいちごを甘く見ていたらしい。



今開かないこの鍵穴に、なんかプラスチック的なものが詰まっていることがもうわかったので
私は、本日夕方に仕事を終えて自宅にいるはずの、近所に住む彼氏さんに電話をし、
「そういうわけなので何かヘアピン的な先の尖った細いものを持ってきてほしい。いちごが詰めたであろうプラスチック片を掻きだしてみる」と言うと、彼は
「それで取り出せたら逆に鍵の開錠屋はいらないと思うけど…」と、
先ほど私がいちごに言ったことと同じようなことを言いつつ、クリップを持って急いで来てくれた。
しばらく彼氏さんと二人でプラスチック救出活動に勤しんだが当然全然無理だった。
彼は出がけに調べてきたという鍵の開錠業者の電話番号を提示しながら
「もうこうなったらやっぱ本職に頼むしかないよ」と言ったが、
開錠だけで済んだらいいが、更に鍵の差し替えなんてことになったら大家さんの許可がいるので
カバンも財布も家の中にある中、まさになけなしのアイテムである携帯電話の登録から
賃貸管理会社の電話番号をひっぱり出して、先に管理会社にこの事情を説明し、
それから、鍵の救○車に電話をしたら、その救急隊員は20分ぐらいで飛んで来てくれて、
一時間以上もの間、家主である私たちを外に放置していた、その問題の「開かない鍵」を
見たこともない不思議な道具をちょちょいと使って、なんとものの2分程度で開けてくれた。

「鍵を変えないといけないかどうかはバラしてみないとわからないのでこれをお借りします」
と言って、土台ごとごっそり外した鍵穴を持って車に戻った隊員がまた20分ぐらいして戻ってきて
「中でバラバラになっていたプラスチック片を全部取り除くことができたので鍵の差し替えは必要ないですね」
と言って、また土台ごと元通りに収めてくれた。
こうして、事件発生から2時間後ようやくこの事件は解決した。

かのように思われたが、実際まだ解決しなかった。


請求金額  14,700円也


あさっての休みに銀行に行こうと思っていたので財布の中には2,000円しかなかった。
っていうか、「志村、給料日前!!!」
泣く泣く彼氏さんにお金を借りて代金を支払うと、隊員はそれを受け取りつつ
「子どもさんにくれぐれもよく注意しておいてくださいよ」と、私を叱りつけた。
てか、逆に客やのに。

そういえばこういうレスキュー系の職人って、客にお金貰って「ありがとうございます」って言わないよな。
自分らみたいな商売がこの世から無くなるのが一番幸せって、ある意味そう思ってはるんかもわからんね。
と彼氏さんに言ったら、
今はその現場を離れているが、本来は発達障害のある子どもたちの支援サポートを本業とする彼は
「あー。うん、きっとそうだね。なんか少しわかる気がするな…」と言っていた。

私「っていうか一番わからんのが、なんで五年生にもなっていちごはあんなことをしたんやろう?」
彼「んー、逆に五年生だから、じゃない?…例えばももだったら、りちが帰ってくるまでただじっと待ってたと思うよ。それだけいちごが成長したってことだと思うよ」
私「そうかー…。なるほどね。…しかし高い授業料やったなー」
彼「そうだねw」

と、そんな感傷に長々とふけっている場合ではなく
この2時間のロスタイムを埋めるべく、私は馬車馬のように家事を働いた。
私が熱で寝込んだ時にこの家庭と子どもらを丸投げされたことがあり、
「りち家の暮らしのリズム」についてよく把握している彼氏さんは
私が何も言わなくても率先して家事育児協力に勤しんでくれて、
彼氏さんがももをお風呂に入れて寝る準備をさせてくれてやっと一日が終わった時、
時計の針は22時を回っていた。

「今日はなんかバタバタさせてしまったし、湯冷めしてもいけないから泊まっていけば」
と私は言った。

私たちは常日頃、
「平日は会ったり泊まりあったりしないで、自分のやるべきことをお互い頑張ろう」
という約束をしているのだが、今日のケースは特異なことであり、
しかも、そもそもヘルプ要請(ヘアピンか何か持って来て!)をこちらから出しておきながら、
「事件が解決したらもう帰れ」っていうのはあまりにも身勝手だと思い、私はそう提案し
彼も「じゃあそうさせてもらうよ」と言って、その日はうちに泊まることになった。


だが、この事件はこの後起こる大事件の序章に過ぎなかった。
今になって思うと、この事件を起こしてくれたいちごに感謝したいぐらいだ。


翌21日水曜日の深夜未明、
私は胸痛及び左上半身全域の痛みに伴う呼吸困難の発作を起こし、
それに気付いた彼氏さんによって病院に担ぎこまれ、そのまま救急救命病棟に緊急入院したのである。


続く



  1. 2009/10/27(火) 14:56:39|
  2. 家族ネタ
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プロフィール

Author:りっさん

京都に生まれ京都で育ち、          放浪の末、京都に舞い戻った女

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