どんつきを右に曲がって左のかどっこ

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アクビ娘は素敵な子

さて。

顎が外れるとどうなるか、みなさん知っていますか。

えっ?知らない?
っていうかそんなん漫画だけやろwって?

まあそんなん言うてたらいいんですよ。
笑ってられるのも今のうちです。
災難は突然やってくるものですから。

なんでこんな上から目線かと言うと私は顎が外れたことがあるからです。


あれは私が19かハタチぐらいの頃でしたね。
当時、高校を卒業してすぐに就職した、
とある製版会社のデザイン課(製版フィルムを作る部署)で私は仕事をしていた。
仕事内容はアートワークで、当時はまだMac導入されてなかったですから
来る日も来る日もライトテーブルに向かって、
手作業でトレースをしたり、写植の文字を貼ったりしていましたね。

終業の定時は夕方の5時半やったんですが、
あの頃はみんな大体毎日7時か8時頃まで残業をしていた。
遅い時は10時とかになることも、まあありました。
私ら作業者でそうやったから、生産管理職の上司・先輩はもっと残業してたと思います。
うちの部署は20代~30代前半が9割を占める男女半々の若い部署でしたが、
上司・先輩からは男も女も関係なく名字呼び捨てにされる体育会系の会社でね。
今は名前呼び捨てとか、いちいちなんか人権的な問題になるんでしょうけど、
なんていうか、体育会系の中に愛があるような感じやったんですよ。
時代と共に、今はどう変わってるか知らないですけど、
あの会社で7年間学んだことは私の誇りであり、基盤になっています。


その事件当日は確か私は、7時半か8時頃に仕事が終わった。
同じチームの先輩らがまだ残業をしていたので
「何か手伝うことありますかー」と聞いたら
「私らももう終わるから帰ってええで、お疲れ」と言われたので
「ほなすんませんけど、お先に失礼しますー」と私は荷物を持って部屋を出て
他のチームの人らに「お先ですー」と挨拶をしながら、
課のフロアを下駄箱のある出入り口に向けて歩きだした時、何の気なしにあくびをした。

その瞬間、左の頬骨の下辺りで

「ガリッ」 だか、 「ゴリッ」 だか、

なんか骨が砕けるような鈍い音がして、激痛が走った。



一瞬何が起こったのかわからなかった。



ひとつだけ確かなことは、口がちょっと半開きのまま閉じない。

なおも痛みの続く左頬の辺りを触ってみると
今まで触れたことのないような異物がなんか内側から飛び出しているのがわかる。


これは多分なら、 顎が外れた。


骸骨なんかの写真や理科室にあった模型を見てわかるのは
顎っていうのは上あごと下あごから形成されているじゃないですか。
その二つが、頬骨のちょっと下辺りでくっついていて
それを開いたり閉じたりさせながら、
我々は物を食べたり口語をしたりしているじゃないですか。
ただ、厳密に言うと上あごと下あごはくっついてるんじゃなくて
ある一点において重なっているというか、文字通り、
「噛み合っている」にすぎないんやと思うんですよ。
だから、それこそ、古典的な漫画のギャグのように、
「ガーン」ってなった時に下あごだけが外れて落ちてしまった場合でも、
…まああれだけ極端に下あごが落ちて完全に離れるってことは無いと思いますけど、
もしも、「ガーン」ってなって下あごが万が一、一旦完全に離れてしまっても
物理的にはそのまま真っ直ぐ垂直に下あごを持ち上げて
上あごとの接点にまたはめてやったら、
外れた下あごは元の位置に収まるはずなんですけど
今回私は、あくびをした時に上あごに噛み合っていた下あごが
通常の開閉レベルを超えて開きすぎ(ちょっと離れた状態)
それが戻る時にちょっと左にずれてしまったので噛み合わせがずれてしまい
だから、口はちょっと開いたままなんぼしても閉じないし
左頬には今内側からこうして、ずれた下あごの骨が飛び出しているのだ。

と、解釈するのに1分ぐらいかかった。

みんな机に向かって真剣に仕事をしている中で、
私が顎を外して立ち尽くしていることに誰も気付かなかった。
なので私はなんとかバレないうちにこのことを処置してしまって、
何事もなかったように風のように爽やかに帰ろうと思って
激痛を堪えて、ずれた下あごを押したり引いたりしながら頑張ったのだが
下あごはどの角度にも微動だにせず、
無理やり動かそうとした痛みで涙が出てくるも「痛い」とも発声できず
開きっぱなしの口内にはとめどなくよだれがあふれ出し
口が閉じないのでまたそれを飲み込むこともできず
意識も体もどこもかしこも良好なのに顎の周りだけが究極に不自由という
全くもって他人に理解されづらい大ピンチに静かに陥った。


ど、どうしよう。



とにかく、社内で問題が起きたらまず、
先輩や上司に報告相談しろと、新人研修の時にさんざん習った。
自分一人で解決しようとするなと。
でも「顎外れた」とか仕事に関係ないし、しかも報告しようにもしゃべれへんしな…。
そうや、なんか紙に書こう、「顎が外れました」って。そしてそれを見せよう。

と思っていたら、向こうから、抱えたファイルを読み歩きしている先輩が
おそらく、立ち尽くす私の背後にある資料棚をめがけて歩いてきた。
確か、K先輩かA先輩だったと思うが
その時私は尋常じゃないパニックだったので正直覚えていないのだ。

チャンス!

あ、でも、紙がない!

でも、もしかしたら「しゃべれへん」と思ってるのは自分だけで
発声してみたら意外としゃべれるかもわからへん、やってみよう!

私は先輩の前に立ちふさがり、決死の覚悟で言った。


「あががはがががひか」(顎が外れました)



ちょwww



マジで全然しゃべれへんやん!
誰や「意外としゃべれるかも」とか言うたやつ!
このままでは、問題についての報告が全く伝わらない上に、なんか
「先輩に対して意味のわからない悪ふざけをしているやつ」になってしまう!

私は必死で、涙とよだれを垂れ流しながら、
突起した左頬を指差して「あがが(顎が)、あがが(顎が)」と繰り返し訴えた。
すると先輩は「えっ?顎が外れたんけ?なんでやねんwww」とか言って笑ったので
私もつられて声無き声で笑ったが、笑っても痛いのでまた涙が出てきた。
すると、先輩の笑い声でフロア中の人間がそれに気付き
光の速さで「りちが顎外れた」ということが課内に伝わり、
私は「なんか顎外したやつ」と、一気に笑いものになった。



私はあの時ほど様々な人間模様を感じたことはなかった。


世の中には本当に色んなやつがいると思った。



忘れもしないのは、
噂を聞いて血相を変えて飛んできた、
新人研修の時にお世話になった教育係のS主任のことだ。

このS主任がまた全社的に有名な、ある種の曲者で、
いや、むしろ歌舞伎者と言ったほうがいいかもしれない。
なんかもう数々のクレイジー伝説の持ち主で
当時、今でいう「アラフォー世代」の女性主任だったが
「アラフォー(笑)」とか「お局様」とかそういうのとは違って
仕事できるし腰低いし仕事にはマジメで人間性も抜群に誠実で朗らかなのだが
「死体」とか「死」をモチーフにしたブラックジョークが好きで、
夏でも皮のロングブーツを愛用してコアな単車で通勤していて、
なんかよくわからないところが多々ある女性なのだ。
ラッカースプレーの廃棄の際に、思いきり爆発させたことがある伝説から
(しかもその時、ラッカーまみれになった上司の姿にちょっと笑っていた)
「孤高のテロリスト」というリングネームがある女性だった。

S主任は、どこから持ってきたのか知らないが、でかいダンボール紙を数枚抱えてきて
それをフロアの隅に敷き詰めて

「りちさん、怖がらなくていいから!さあ、ここに横になって!」

と言った。


なんで???


なんか雪山で遭難したぐらいの勢いやけど顎外れただけでピンピンしてるし…。
もしかしてこれもなんか、彼女独特のブラックジョークだろうか?
だが、S主任の目は真剣だった。
なんかだいぶ間違っているが真剣に部下を心配している目だった。

でもさすがにダンボールに横になるほどの重体ではないので
とりあえず、敷き詰められたダンボールの上に座った。


なんかもう完全に

「顎の外れた乞食」 

みたいだったので、別の意味で泣けてきた。


さっきまでバリバリ仕事していたはずなのに、
私は一気にダンボール生活の乞食に成り下がり、
「顎外れたりちが見たい」という興味本位の同僚や先輩や後輩が
入れ替わり立ち代わり、無様な私の姿を見物に来て、いちいちいらんことをした。


「顎外れたとか酔狂じゃないのか」と、強引に顎をはめ直そうと無理強いな素人治療をするやつ。

本気で気味悪がりながらも怖いもの見たさでちょっと距離を置いて柱の陰から見ているやつ。

単純におもしろがって「顎外れた人とか初めて見たww」と、目の前で爆笑しているやつ。

「元気出してください!」と、熱くはちみつレモンの飴をくれるやつ。

しゃべれない私に対して「顎外れたん?なんで?」としつこく経緯を聞いてくるやつ。

「りちが顎外れた話の実況」をあちこちに触れ回るやつ。



おまえら全員、顎外れろボケ!!!



当時、携帯写メが無かったことがなんか救いですね。
あれ、多分、今なら確実に携帯構えてましたよ、周りの人間がほぼ全て。
もうそんなん生き地獄ですからね。
昭和生まれでほんまなんか良かったですよ。



このままここにいても一向に外れた顎が治る気配がしないので
そして涙とよだれも垂れ続ける一方なので
私は、よだれを覆っているハンカチを口に詰めて、チャリで自力で病院に行こうと思った。


が、その時。


ようやく、本当の救い主が現れたのである。

つづく
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  1. 2009/02/21(土) 23:41:31|
  2. 思い出のネタ(社会人編)

プロフィール

りっさん

Author:りっさん

京都に生まれ京都で育ち、          放浪の末、京都に舞い戻った女

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