さて、
前回のミナミさんに続いて、今日は、
まだ少女だった頃の私にとって、もう一人のアイドルのお話を…。
他愛ない昔の淡い恋の話って、なんでこんな楽しいんでしょう?
え?おまえの恋バナなんかどうでもいい?ここは場末の居酒屋か!って。
そんなん言うなや〜。まあ聞けや。
私の、レモンの季節のことを。←意味不明。
大人の階段昇る〜君はまだ〜シンデレラさ〜。←思いつき。しかもH2O。
その人は、高校の先輩でした。
私が1年生の時、二つ上だった人で、
でもダブってはったんで、二回目の2年生だった。
うちの高校は、ちゃんと勉強してたやつもいっぱいいるが、
なんかホンマ自由やったんで、遊ぶやつはとことん遊んでいた。
その人もわりと遊んでる側の人で、
っていうかホラ、なんか「目立つグループ」とかありますやん?
行事の時とかに真剣にバカやって盛り上げたりするような。
その集団の一人で、でもその人自体はそんな目立つタイプでもなく、
こう、ツレ(仲間)らが休み時間に食堂の横とかで
コドモのように水風船の投げあいとかしてじゃれてふざけてんのを
「フッ。何やってんだよ」って感じでクールに横目で見て微笑んでいて
「おまえは何を一人でたそがれてんねん!」とか言うて
みんなから水風船の集中砲火を浴びて、
「うわっ!ちょーやめろや〜」みたいな、なんかそんな人。
雰囲気的にわかるかなあ?
派手なグループの人なんやけど、本人はそんな派手な人ではなく、
みんなを引っ張るリーダータイプでもなく、率先してスタンドプレイもせず、
だから後輩の私らとかも、
「顔は知ってるけど名前知らん…でもめっちゃ男前やんな〜!!」
っていう、なんかそんな感じの人で、
多分男同士の中では、
「おまえはええよな〜。黙ってるだけで女が寄ってくるねんから」
とか、なんかそんなん言われてそうなちょっとシャイな感じの人。
…前出のミナミさんもそんなタイプなんで、私はきっとそんな系の人に焦がれるんやな。
だから、だいぶ長いこと、その人の名前がわからなかった。
休み時間のたびに、食堂の横の中庭(そのグループのたまり場)で
なんかふざけたり、踊ったり(ジャネットジャクソンとか流行ってた)
なんかそんなんしてはるのをこっそり見に行くのが楽しみで、
あ、もちろんその人は踊ったりとかしないんですけど、
たまにボソっとしゃべりながら(しかも聞き取れないぐらいの声で)
基本的に「フッ」て笑って見てはるだけなんですけど、
そんな彼を見たいがために毎時間毎時間、
ツレと一緒に食堂の壁の陰に隠れて、
限りなくストーキングに近いおっかけをしていた。
手ぶらで立ってるとか変なんで、
いや、その人からバレるような場所からは見ませんけど、
廊下通りすがるやつらの「何この子ら」っていう視線が痛いんで、
張り込みの刑事+コーヒーにあんぱん、のイメージを真似て、
食堂でブリックのコーヒーとかフルーツ牛乳とか買って飲みながら張ってた。
名前が知りたいなあーと、ずっと思っていた。
夜寝る前とかに思い出して、彼の名前をつぶやいたりしてみたいと。←怖いから。
ツレとかに頼んで、部活とかの先輩経由で探ってもらったりしたんやけど、
「サトウっぽいらしい」とか「ヤマモト的な名前」とか
適当なことばっかり言うて、みんな真剣に調べてくれなかった。
なので、一緒に張り込んでたツレと、なんとか彼らの会話から
その人の名前を聞き取ろうと必死で聞き耳を立てていた。
そんなある日。いつもの中庭で。
自転車にまたがってるその人と、
その人と仲のいい後輩(2年生)のやんちゃグループの人がなんかふざけていて、
その2年生の人が、その人のチャリケツに強引に飛び乗ったりして、
その人が「おまえやめろやー」とか言って笑いながら振り落とそうとした時、
「ちょ、カエラさん!!」
って、その2年の人が叫んだ。
私とツレは、顔を見合わせた。
私 「今、カエラさん、って呼ばはったよな?」
ツレ「私にもそう聞こえた」
私 「カエラ、さん?」
ツレ「…なんか、変な名前……」
私 「うん…」
ツレ「でもそう聞こえた…」
私 「聞こえたよな…」
私とツレはそれからもずっと、
「もしかして、カワハラさん、の聞き違いなんじゃね?」とか
「実はハーフで、カール・エダさん、なんじゃね?」とか
なんか色んなことを言いながら、
「でも絶対間違いなくカエラさんって聞こえたよな!」って話に結局行き着き、
その人のことを「カエラさん」と、聞こえた通りのその名前で呼んでいた。
私と、私の付き添いのそのツレがしつこくおっかけしてるのを呆れてた他のツレらにも
「カエラさん」の名前は徐々に浸透していき、
「またカエラさん見に行くの?」
「りちはホンマ、カエラさんが好きやな〜」
とか、普通にもうその人は私らに「カエラさん」って呼ばれていた。
やがてバレンタインの時期になり。
私はそんなんカエラさんにチョコレート渡すとか絶対無理とか思ってて、
そんなん違って、告白したいとか違ってカエラさんを見てるだけでいいから、
とか思っていたのに、ツレらがよってたかって
「おまえのカエラさんへの愛はそんなもんか」とか
「俺やったら付き合うどうの別として後輩の女の子からチョコ貰ろたら嬉しい」とか
なんかやいやい言うて私の乙女心に揺さぶりをかけてくるので、
「わかったわ!ほなチョコ渡したるわ!おまえら見てろ!」
みたいな話になってしまって、私はカエラさんにチョコを渡すハメになった。
時期同じくして、一緒にストーカーしてたそのツレがようやく、
「あの人の名前は本当はタチカワさん(仮名)というらしい」
という確かな情報を入手してきた。
私 「タチカワさん???全然、カエラさん違うやん!!」
ツレ「そのことなんやけど、あの時のことをもう一度思い出してみたんやけど、
多分(あの2年の先輩は)、帰ろうとしてたタチカワさんを、
帰らさん!…って言わはったんちゃうかなと思えてきて…」
私 「今頃そんなんピンとくんなよ…。もう完全にカエラさんやのに」
ツレ「でも、でも解ってよかったやん!チョコ渡す時にカエラさんとか言わんでよかったやん!」
私 「そらそうなんやけど…」
でも、タチカワさんっていうその名前は私の中ではやっぱり違和感があって
やっと探り得た「タチカワさん」というれっきとした本当の名前があるにも関わらず、
私もツレらもやっぱり「カエラさん」と呼び続けた。
そんなこんなでバレンタイン当日。
一時間目と二時間目の間の休み時間も
二時間目と三時間目の間の休み時間も
三時間目と四時間目の間の休み時間も
私はカエラさんにチョコを渡すことが出来なくて、
姿が見える距離まではいけるんやけど、
むこうの視界に入る距離まで、どうしても踏み出せなくて、
昼休みの時、固唾を飲んで見守ってくれていたツレらに
「ヘタレ」「ヨワムシ」「意気地なし」「アホ」「ちび」「Aカップ」
「何をやらせてもダメなやつ」「俺にきつねうどん奢れ」とか
なんかもう気の弱い子やったら登校拒否になりそうなことをいっぱい言われた。
それでもやっぱり、次の休み時間も踏み出せなくて、
とうとう放課後になってしまった。
「おまえあかんわ、イケてない」とか
「はいはい、おわりで〜す」とか言いながら、
みんなが私を見捨てて、部活やらバイト行くやらで散らばろうとした時。
食堂の横の中庭でチャリにまたがって友達となんかしゃべってるカエラさんが、
廊下の端にいる私らのとこから見えた。
「ちょー、カエラさんまだいてはるやん!」
「行けーりち!!!」
「頑張れ!これが最後のチャンス!」とか勢いづけられて、
私は学園ドラマのヒロインみたいに長い廊下をダーって走って、
息を切らせながらカエラさんの前に飛び出した。
カエラさんはびっくりしていた。
びっくりっていうか、なんかもうギョッとしていた。
「あの、これ…、えっと、今日バレンタインで…」
とか、なんか締まり悪くしどろもどろで言いながら、
朝からずっと、
出したり引っ込めたりしてぐちゃぐちゃになってたチョコの袋を渡した。
ちょっと泣きそうになった。
カエラさんの頬が緩んで、友達に「おおーっ」とか冷やかされながら
「あ、ありがとう」ってもらってくれた。
緊張でぶっ倒れるかと思った。
カエラさんは「どうしたらいいのかな」みたいな感じで、
なんか去るに去れず、帰るに帰れず、っぽかったので、
なんか私が先に去ったほうがいいのかなとか思って、
「さようなら!」って言うて元来た廊下をダーって走って戻ろうとしたら
廊下の陰からその様子を伺ってたツレらがわっと飛び出してきて
「りち、やったやん!」
「うわこいつちょっと泣いてる〜!」
「ようやった!よし、肩車したろ!」
とか言うてやんや騒いで、
私は何故か、男のツレの一人に肩車されながら
なんかもう祭りみたいな状態でぐちゃぐちゃになりながら撤収させられた。
肩車の上からちょっとだけ後ろを振り返ったら、
明らかに引きながら呆然とこちらを見ているカエラさんが遠くに見えた。
淡い恋の終わりを確信した私は、次の日からストーキングをやめ、
そして、三学期が終わる頃、風の噂で
カエラさんが学校を辞めるらしい、と聞いた。
もうきっとこれで二度と会えなくなるんや、と思ったその時、初めて、
ずっと遠い人だったカエラさんと、話とか、してみたかったな…と、思った。
- 2007/03/05(月) 00:26:07|
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